名古屋市で外壁塗装に火災保険は使える?適用条件と申請の注意点をプロが解説

「火災保険を使えば、自己負担なしで外壁塗装ができますよ」

もし、リフォーム業者からこんな言葉をかけられたら、とても魅力的な提案に聞こえるかもしれません。外壁塗装は決して安い買い物ではないだけに、「費用がかからないなら、ぜひお願いしたい」と思うのは自然なことです。


しかし、その言葉を鵜呑みにして契約してしまう前に、少しだけ立ち止まって考えてみてください。本当に、そんなうまい話があるのでしょうか。


結論から言えば、台風などの自然災害によって受けた被害の修理に、ご自身が加入している火災保険を使えるケースは確かに存在します。しかし、「火災保険を使えば、どんな家の外壁塗装も無料になる」というわけでは決してありません。


残念ながら、一部にはこの制度を悪用し、お客様を巧みに勧誘する業者がいるのも事実です。本記事では、皆様がそうしたトラブルに巻き込まれることがないよう、火災保険を外壁塗装に利用するための正しい知識と、申請する際の注意点について、専門家の視点から公平に解説していきます。




経年劣化は対象外。「自然災害による損害」が絶対条件

まず、火災保険を理解する上で、最も大切で、基本的な原則についてお話しします。それは、火災保険は、あくまで「突発的で、予測が難しい偶然の事故」によって生じた損害を補償するためのものである、ということです。


この原則に照らし合わせると、時間の経過とともに自然に発生する、いわゆる「経年劣化」による塗り替えは、火災保険の対象にはなりません。例えば、「築10年が経って、壁の色があせてきた」「長年の雨風で、塗装の表面が粉っぽくなっている(チョーキング現象)」といった理由は、経年劣化と判断されるため、保険金が支払われることはありません。


では、どのような場合に保険の対象となるのでしょうか。それは、主に「自然災害」によって、ご自宅の外壁に直接的な損害が発生した場合です。



保険の対象となる「自然災害」とは?

ご加入の保険契約によって詳細は異なりますが、一般的に外壁の修理に関連するのは、主に以下の3つの災害です。


・風災(ふうさい):台風や竜巻、突風といった強い風による損害です。例えば、強風で飛ばされてきた物が壁に当たってひび割れができた、といったケースがこれにあたります。

・雹災(ひょうさい):雹(ひょう)が降ったことによる損害です。硬い氷の粒である雹が壁に当たり、外壁材が凹んだり、傷ついたりした場合などが対象となります。

・雪災(せっさい):大雪の重みや、雪崩(なだれ)による損害です。例えば、屋根に積もった雪の重みで雨樋が壊れ、それに伴って外壁の一部が破損した、といったケースが考えられます。


これらの自然災害が原因で、外壁に明確な「損害」が生じたと認められた場合に限り、その修理費用が火災保険の補償対象となる可能性があるのです。




どんな損害ならOK?台風で飛来物が衝突、雹で外壁が凹んだ、などの実例

自然災害による損害が対象、と言われても、具体的にどのようなケースが当てはまるのか、イメージしにくいかもしれません。ここでは、実際に火災保険の対象となる可能性が高い、具体的な損害の例をいくつかご紹介します。



「風災」として認められるケース

例えば、大型の台風が名古屋を通過した際に、以下のような被害を受けたとします。


・近所の家の屋根瓦が強風で飛ばされてきて、自宅のサイディングの壁に直撃し、大きく割れてしまった。

・突風にあおられた自転車が倒れ、玄関周りの壁にぶつかって、深い傷がついてしまった。

・風でアンテナが倒壊し、その際に外壁の一部を破損させてしまった。


このように、「強い風が原因で、何かが起こり、その結果として壁が壊れた」という、原因と結果の関係がはっきりしていることが重要です。



「雹災」や「雪災」のケース

・ゴルフボールのような大きな雹が降り、金属製の外壁の表面が、広範囲にわたってボコボコに凹んでしまった。

・記録的な大雪の重みで、カーポートの屋根が曲がり、その支柱が繋がっている家の壁まで歪んでしまった。


これらのケースも、雹や雪という自然現象によって、建物に直接的な損害が生じているため、保険の対象となる可能性が高いと言えます。



補償されるのは「原状回復」の費用です

ここで一つ、非常に大切な注意点があります。それは、保険で補償されるのは、あくまで「損害を受けた部分を、元の状態に戻す(原状回復する)ために必要な費用」に限られる、ということです。


例えば、台風で一面の壁だけが大きく損傷した場合、保険の対象となるのは、原則としてその「一面の壁」を修理し、塗装し直すための費用です。損傷していない他の壁まで含めて「家全体をきれいに塗り直す費用」が全額支払われるわけではありません。


一部の業者が言うような「保険を使って家全体を無料で塗装できる」という話は、この原則を無視した、極めて悪質な勧誘文句である可能性が高いことを、ぜひ覚えておいてください。




保険申請の基本的な流れと注意点

もし、ご自宅が自然災害による被害を受け、火災保険の利用を検討する場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。慌てずに、正しく申請を行うための基本的な流れと、それぞれのステップでの注意点についてお話しします。



① まずはご自身の保険会社へ連絡を

被害に気づいたら、修理業者を探す前に、まずご自身が契約している保険会社や代理店に連絡をすることが第一歩です。契約内容の確認や、保険金を請求できる可能性があるかどうかの相談に乗ってもらえます。ここで、今後の手続きの流れや、必要になる書類について、あらかじめ説明を受けておくと、その後の進行がスムーズになります。



② 証拠となる「損害状況の写真」を撮影する

保険会社に連絡した後、あるいは連絡する前に、必ず被害の状況を写真に撮っておきましょう。これは、損害が「自然災害によって生じた」ということを証明するための、非常に重要な証拠となります。被害箇所がはっきりと分かるように近くから撮った写真と、家のどの部分か分かるように少し離れた場所から撮った写真の両方があると、より客観的な資料となります。修理工事が始まってしまうと、元の状況が分からなくなるため、必ず工事の前に撮影しておくことが大切です。



③ 修理業者に依頼し、見積書を作成してもらう

保険会社への報告と写真撮影が終わったら、次に修理を依頼する業者を探し、被害状況の調査と、修理にかかる費用の見積書を作成してもらいます。この際、業者には「火災保険の申請に使う可能性がある」ということを伝え、見積書には、被害の原因が台風や雹災といった自然災害である旨を記載してもらうようお願いしましょう。



④ 契約者本人が、保険会社へ書類を提出する

ここが非常に重要なポイントですが、保険金の請求手続き(申請)は、必ず保険の契約者であるご本人が行わなければなりません。修理業者は、あくまで専門家として、被害状況の調査や見積書の作成といった「お手伝い」をする立場です。必要な書類(保険金請求書、修理見積書、損害写真など)を揃え、保険会社に提出するのは、お客様ご自身の役割となります。業者に申請手続きの代行を任せることはできない、ということを覚えておいてください。




「保険金が使える」と謳う業者との付き合い方

残念ながら、お客様の「少しでも費用を抑えたい」という気持ちに付け込んで、火災保険の利用を悪用しようとする業者が存在することも事実です。ここでは、トラブルを避けるために、特に注意していただきたい業者の特徴についてお話しします。



①「無料で工事できる」と断言する業者

「保険金を使えば、自己負担は一切ありません」「必ず保険金がおりますから、無料で工事ができます」というように、契約前に支払いが無料になることを断言する業者には、絶対に注意してください。保険金が支払われるかどうか、そして、いくら支払われるのかを最終的に決定するのは、保険会社です。業者がそれを事前に保証することは不可能です。これは、お客様の契約を急がせるための、非常に危険なセールストークです。



② 高額な「申請サポート手数料」を請求する業者

修理の見積もりとは別に、「保険金の申請をサポートするための手数料」として、高額な費用を請求したり、保険金の何割かを成功報酬として要求したりする業者も存在します。先ほどお話ししたように、信頼できる業者であれば、保険申請に必要な見積書の作成などは、修理を依頼することを前提として、協力してくれるのが一般的です。不当に高額な手数料を求められた場合は、その業者への依頼を考え直すべきでしょう。



③ 経年劣化を「災害のせい」として申請させようとする業者

最も悪質なのが、経年劣化による傷みであるにも関わらず、「これは前の台風のせいということにして、保険金を請求しましょう」というように、虚偽の申請をそそのかしてくるケースです。もし、これに応じて嘘の申告をしてしまうと、お客様ご自身が「詐欺」という犯罪に加担したことになりかねません。


私たちのような誠実な業者は、建物の状態をありのままに診断し、災害によるものか、経年劣化によるものかを、専門家として正直にお伝えします。お客様をリスクに晒すようなご提案をすることは、決してありません。

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火災保険は賢い選択肢。しかし、正しい知識と誠実なパートナーが不可欠

ここまで見てきたように、もしご自宅が台風や雹といった自然災害によって損害を受けた場合、火災保険を活用して修理費用を賄うことは、お客様にとって非常に有効で、賢明な選択肢です。そのために、私たちは保険に加入しているのです。


しかし、その制度を正しく利用するためには、何よりもまず、お客様ご自身が「保険は経年劣化には使えない」「申請は自分で行うものだ」といった、正しい知識を持つことが大切になります。


そして、それと同じくらい重要なのが、お客様の立場に立ち、不正を勧めることなく、専門家として誠実に申請のお手伝いをしてくれる、信頼できる業者をパートナーに選ぶことです。


もし、災害によるものかもしれないご自宅の傷みでお困りの際は、まずは正直に相談に乗ってくれる専門業者を探し、「火災保険の利用も考えている」ということを伝えた上で、建物の状態を見てもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。

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