外壁塗装は、住まいのメンテナンスの中でも決して安くはない、大きな買い物の一つです。だからこそ、「できることなら、費用は少しでも安く抑えたい」と考えるのは、どなたにとってもごく自然なことだと思います。
しかし、ここで一つ、心に留めておいていただきたいことがあります。それは、ただ価格の安さだけを基準に業者を選んでしまうと、後から「こんなはずではなかった」と後悔する事態に繋がりかねない、という点です。例えば、数年で塗装が剥がれてきてしまい、結局、もう一度やり直しが必要になって、かえって高くついてしまった、というケースも残念ながら少なくありません。
外壁塗装で本当に大切なのは、安さを追求することではなく、「適正な価格で、質の高い、長持ちする工事」を実現することです。この記事では、塗装の品質を落とすことなく、賢く費用を抑えるための健全な方法と、契約してはいけない「安すぎる業者」が持つ危険なサインについて、専門家の視点から詳しく解説していきます。
品質を落とさずにコストダウン。プロが実践する5つのテクニック
費用を抑えたいけれど、工事の質で妥協はしたくない。そんな方に、私たちがお勧めする健全なコストダウンの方法が5つあります。これらは、いずれも塗装の品質を犠牲にすることなく、賢く費用を調整するための有効な手段です。
① 複数の業者から話を聞き、内容を比較する
複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」は、費用を比較する上で非常に重要です。ただし、ここで大切なのは、単に合計金額だけを比べるのではない、ということです。それぞれの見積もりに、どのような工事内容が、どのメーカーの、何という塗料を使って、何回塗りで含まれているのか。詳細な内訳までをしっかりと比較検討することが、ご自宅にとっての適正な価格を知るための第一歩になります。
② 屋根など、他の塗装も同時に行い足場代を節約する
外壁塗装の費用全体の中で、実は大きな割合を占めているのが、家の周りに組み立てる金属製の「足場」の設置費用です。この足場代は、塗装工事全体の費用の約20%にもなると言われています。屋根の塗装にも、外壁塗装と同じように足場が必要です。もし屋根のメンテナンスも近い将来に考えているのであれば、外壁と同時に工事を行うことで、この足場代を一度で済ませることができ、結果的に数十万円単位の大きな節約に繋がります。
③ 塗料のグレードを場所によって見直す
必ずしも家の全ての壁に、最高級の塗料を使う必要はありません。例えば、紫外線が強く当たる南面には耐久性の高い塗料を使い、日当たりの影響が少ない北面には標準的なグレードの塗料を使う、といったように、場所の特性に合わせて塗料を使い分ける「適材適所」の考え方です。専門家と相談しながら、費用と性能のバランスを考えることで、無駄なコストを削減できる場合があります。
④ 中間の費用を省ける塗装専門業者に直接依頼する
大きなリフォーム会社やハウスメーカーに工事を依頼した場合、実際に塗装作業を行うのは、そこから仕事を受けた下請けの塗装業者、というケースが少なくありません。その場合、中間の紹介料などが発生し、その分が工事費用に上乗せされることになります。一方で、自社で職人を抱えている塗装の専門業者に直接依頼すれば、こうした中間の費用を省くことができます。
⑤ 自治体の助成金や補助金を調べてみる
お住まいの自治体によっては、省エネに繋がるリフォームに対して、助成金や補助金を出している場合があります。例えば、遮熱効果のある塗料を使った塗装工事などが対象になるケースです。名古屋市のウェブサイトなどを確認したり、業者に相談したりして、活用できる制度がないか調べてみるのも良い方法です。
なぜ「職人直営店」は適正価格を実現できるのか
先ほど、費用を抑える方法の一つとして「塗装専門業者に直接依頼する」という点に触れました。中でも、特に注目したいのが、自社で職人を雇用し、育成している「職人直営店」と呼ばれる業者の存在です。なぜ、職人直営店は、質の高い工事を、適正な価格で提供することが可能なのでしょうか。その理由を、少し掘り下げて見ていきましょう。
ハウスメーカーと専門店の価格構造の違い
例えば、テレビCMなどでよく見かける大手ハウスメーカーやリフォーム会社に外壁塗装を依頼したとします。多くの場合、お客様から仕事を受けた後、実際の塗装工事は、提携している下請けの塗装業者が行います。時には、その下請け業者が、さらに孫請けの業者に仕事を発注する、というケースさえあります。この構造では、お客様が支払う工事費用の中に、それぞれの会社が利益として得るための「中間マージン」が含まれることになります。
「中間マージン」がないことの大きなメリット
一方で、職人直営店の場合は、お客様から直接お仕事の依頼を受け、そのまま自社の職人が現場に出て、施工を行います。営業担当者も、現場で作業する職人も、同じ会社の人間です。ここには、下請けや孫請けといった外部の業者が介在しないため、先ほどお話ししたような中間マージンが一切発生しません。
削減した費用を、価格と品質に還元する
この中間マージンがない、ということは、お客様にとって二つの大きなメリットに繋がります。一つは、余計な費用が上乗せされないため、純粋な工事費用だけで済む、つまり「適正な価格」が実現できるということ。そしてもう一つは、削減できた費用を、より品質の高い塗料の使用や、丁寧な下地処理といった「工事の品質向上」に充てることができる、ということです。
私たちリフォームの松もとのような職人直営店が、高品質な工事を、ご納得いただける価格でご提供できるのは、まさにこの直接的な事業モデルに基づいているからです。
その安さには裏がある?注意すべき「危険な見積もり」の5つの特徴
複数の業者から見積もりを取ると、一社だけ、他と比べて驚くほど安い金額を提示してくる業者に出会うことがあります。「これはお得だ」と、つい契約したくなってしまうかもしれませんが、少し立ち止まって、その安さの理由を冷静に考えてみる必要があります。相場を大幅に下回る価格には、多くの場合、何らかの「裏」が隠されているものです。ここでは、契約してはいけない「危険な見積もり」が持つ特徴について解説します。
① 「塗装一式」など、内訳が不透明
見積書を見たときに、「外壁塗装工事 一式 〇〇円」というように、詳細な内訳が書かれていない場合は注意が必要です。本来、見積書には、どのような材料を、どれくらいの量使い、どのような作業を行うのかが、項目ごとに細かく記載されているべきです。内訳が不透明だと、後から「この作業は含まれていませんでした」と、追加の費用を請求されるトラブルの原因になります。
② 塗料名やメーカー名が記載されていない
「シリコン塗装」「フッ素塗装」といった塗料の種類だけが書かれていて、具体的なメーカー名や製品名が記載されていない見積書も危険です。同じシリコン塗料でも、メーカーや製品によって価格や耐久性は様々です。製品名を明記しないことで、実際には安価で質の低い塗料を使われてしまう可能性があります。
③ 下地処理や付帯部分の塗装が含まれていない
塗装の寿命を左右する最も重要な工程は、高圧洗浄やひび割れの補修といった「下地処理」です。この工程の手間を省くことで、費用を安く見せかけているケースがあります。また、雨樋(あまどい)や軒天(のきてん)といった「付帯部分」の塗装が見積もりに含まれていない場合もあります。後から「別途費用がかかります」と言われないよう、どこまでの作業が含まれているのかを、契約前に必ず確認する必要があります。
④ 極端な値引きを提示して契約を急かす
「今日契約してくれるなら、足場代を無料にします」「キャンペーンは本日までです」といったように、大幅な値引きをちらつかせて、その場で契約を迫る業者には特に注意が必要です。冷静に考える時間を与えず、焦らせて契約させるのは、悪質な業者がよく使う手口です。
⑤ 保証内容が曖昧
工事後の保証について、口頭での説明だけで、書面での保証書を発行しない業者も信頼できません。「何かあったら、いつでも対応しますから」と言葉では言っていても、実際に不具合が起きた時に、きちんと対応してくれない可能性があります。保証の期間だけでなく、どのような場合に、どのような対応をしてくれるのか、保証内容が書面で明確に示されているかを確認しましょう。
本当のコストパフォーマンスとは何か
外壁塗装を考える上で、多くの方が「コストパフォーマンス」、つまり費用対効果を重視されると思います。しかし、このコストパフォーマンスを、単に「工事費用が安いこと」だと考えてしまうと、本質を見誤ってしまう可能性があります。
本当の意味でのコストパフォーマンスとは、「一度の塗装で、どれだけ長い期間、家を健やかな状態で保てるか」という、長期的な視点で考えるべきものです。
例えば、ここに二つの選択肢があったとします。
Aプラン:工事費用は80万円。しかし、使われている塗料の耐用年数は8年。
Bプラン:工事費用は120万円。しかし、使われている塗料の耐用年数は15年。
目先の費用だけを見れば、Aプランの方が40万円も安く、魅力的に見えるかもしれません。しかし、長期的な視点で考えてみましょう。もし30年間、この家に住み続けるとしたら、Aプランでは3回以上の塗り替えが必要になり、合計で240万円以上の費用がかかる計算になります。一方で、Bプランであれば、塗り替えは1回で済み、合計費用は240万円です。
もちろん、これは単純な計算例ですが、お伝えしたいのは、塗装工事の価値は、支払った金額だけで決まるのではない、ということです。初期費用が多少高くても、耐久性の高い塗料を使い、丁寧な下地処理と確かな技術で施工することで、結果的に塗り替えの回数を減らし、生涯にかかる住まいの維持費用(ライフサイクルコスト)を抑えることができるのです。
https://www.reform-matsumoto.jp/paint
賢い費用計画とは「適正価格で、高品質な工事」を追求すること
外壁塗装の費用計画を立てる上で、最も大切な心構え。それは、単に安さを追い求めるのではなく、「なぜこの価格になるのか」という根拠を理解し、ご自身が納得できる「適正な価格」で、「品質の高い工事」を実現することです。
そのためには、いくつかの業者と直接話し、見積もりの内容について、一つひとつ丁寧に説明してもらう機会を持つことが不可欠です。そして、その説明に誠実さや専門性を感じられるか、こちらの疑問に親身になって答えてくれるか、といったコミュニケーションの部分も含めて、信頼できるパートナーを見極めることが重要になります。
この記事でご紹介した、賢く費用を抑える方法と、危険な業者を見抜くポイントが、あなたの後悔のない業者選びの一助となれば幸いです。まずは信頼できそうな業者をいくつか探し、見積もりと併せて詳しい話を聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

