「そろそろ我が家も外壁塗装を」と考え始めたとき、多くの方が「いつ工事をするのが一番良いのだろう？」という疑問を持たれます。費用や業者選びと並んで、季節や時期は、計画を立てる上での大きな関心事の一つです。
結論から言えば、しっかりとした知識と技術を持つ専門業者であれば、基本的に一年を通して外壁塗装を行うことは可能です。しかし、塗料というものは、実は非常にデリケートな化学製品です。その日の気温や湿度、天候によって、乾き方や性能の現れ方が大きく左右されるという側面を持っています。
例えば、塗料メーカーは、それぞれの製品が持つ性能を100%引き出すための「施工条件」を定めています。一般的には「気温5℃以上、湿度85%以下」といった基準があり、この条件を満たさない環境で塗装を行うと、塗料が本来持つはずの耐久性を発揮できず、数年で剥がれてきてしまうといった不具合に繋がる可能性もあるのです。
ここでは、名古屋の気候が持つ特徴を踏まえながら、それぞれの季節に外壁塗装を行うメリットと、注意すべき点について、一つひとつ詳しくお話ししていきます。
塗装工事の「ベストシーズン」とされる春と秋
一般的に、外壁塗装を行うのに最も適している、いわゆる「ベストシーズン」と言われているのが、春と秋です。なぜこの季節が選ばれるのか、その理由と、知っておきたいポイントについて見ていきましょう。
なぜ春と秋は人気？安定した気候がもたらす品質への好影響
春（3月～5月）と秋（9月～11月）は、気候が穏やかで安定している日が多いのが特徴です。気温や湿度が、塗料メーカーが推奨する施工条件の範囲内に収まりやすく、塗料がゆっくりと、かつ均一に乾燥するのに最適な環境が整っています。
塗料は、ただ乾けば良いというものではありません。適切な時間をかけてじっくりと硬化することで、初めてその塗料が持つ本来の耐久性や防水性といった性能を発揮し、強い「塗膜（とまく）」を形成することができます。気候が安定している春と秋は、この塗膜の品質を最も高く保ちやすい季節なのです。
工事が計画通りに進みやすいという安心感
春と秋は、晴天が続きやすいという点も大きなメリットです。塗装工事は屋外での作業が中心となるため、雨の日は基本的にお休みになります。雨の日が続くと、その分だけ工期が延びてしまい、ご近所への配慮やご自身の生活への影響も長引いてしまいます。天候が安定しているベストシーズンは、こうした工期の遅延リスクが少なく、計画通りに工事が進みやすいという、精神的な安心感にも繋がります。
一方で知っておきたいデメリット
品質、工程ともに安定している春と秋は、当然ながら一年で最も人気の高いシーズンです。そのため、信頼できる腕の良い塗装業者は、数ヶ月前から予約で埋まってしまうことが少なくありません。「思い立ってすぐに工事を始めたい」と思っても、希望の時期に依頼するのが難しい場合があります。また、繁忙期であるため、価格交渉の余地が少ない傾向にあることも、知っておきたいポイントの一つです。
注意が必要な「オフシーズン」とされる夏と冬
気候が安定している春や秋に比べて、夏と冬は、塗装工事を行う上でいくつか注意が必要な点があります。しかし、しっかりとした業者を選べば、これらの季節でも品質の高い工事を行うことは十分に可能です。ここでは、夏と冬の塗装における注意点と、その対策についてお話しします。
夏（6月～8月）の塗装における注意点
名古屋の夏は、梅雨の時期と重なる6月から7月にかけては、雨による工期の遅延が最も懸念される季節です。そして梅雨が明けると、今度は厳しい暑さと高い湿度がやってきます。
気温が高すぎると、塗料が乾くスピードが速くなりすぎてしまい、塗膜の表面に気泡ができたり、シワが寄ったりといった不具合（施工不良）が起きやすくなります。また、近年増えている「ゲリラ豪雨」と呼ばれる突然の激しい雨も、作業中の塗料を流してしまうリスクとなります。
こうしたリスクを避けるため、夏の施工では、その日の気温や湿度を細かく管理し、作業時間を調整するなどの専門的な判断が業者に求められます。
冬（12月～2月）の塗装における注意点
冬場の塗装で最も注意すべきなのは、気温の低さです。先ほどお話ししたように、多くの塗料は気温が5℃以下になると、正常に硬化しなくなってしまいます。たとえ日中の気温が5℃以上あっても、朝方や夕方にはその基準を下回ってしまうため、一日に作業できる時間が限られてきます。
また、冬は空気が乾燥している一方で、朝露や霜が降りやすい季節でもあります。壁の表面が湿っている状態では塗装ができないため、作業を開始する前に、壁が完全に乾くのを待つ必要も出てきます。日照時間が短いこともあり、夏場に比べて工期が少し長くなる傾向があります。
オフシーズンでも品質を保つことは可能か？
ここまで夏と冬の注意点をお話ししてきましたが、これはあくまで「セオリー通りの施工ができない業者」に頼んだ場合の話です。経験豊富で、地域の気候を熟知している専門業者であれば、季節ごとの特性を理解した上で、品質を担保するための対策をきちんと講じてくれます。塗料の選択や乾燥時間の設定、作業時間の調整など、プロならではの知識と技術で、季節による品質の差が出ないように工事を進めることが可能です。
また、一般的に工事が少ないオフシーズンは、比較的予約が取りやすく、スケジュールに融通が利きやすいというメリットもあります。
梅雨、台風、厳しい残暑。「名古屋ならでは」の気候リスクと対策
日本全国、どの地域にも特有の気候がありますが、外壁塗装を考える上で、名古屋ならではの注意点がいくつか存在します。これらの地域性を理解しているかどうかは、業者選びの際の一つの大切な判断基準になります。
まず、多くの方が心配されるのが、6月から7月にかけての梅雨の時期です。この時期は、どうしても雨の日が多くなるため、他の季節に比べて工期が延びやすくなる傾向があります。しかし、雨が降らない日を選んで作業を進めること自体は可能ですし、梅雨の晴れ間は空気が澄んでいて、塗装に適した日も少なくありません。
次に注意したいのが、夏から秋にかけての台風シーズンです。近年、大型で強い勢力を持つ台風が東海地方に接近、上陸するケースも増えています。台風が接近している状況では、安全のために工事を中断するのはもちろん、場合によっては設置した足場を一時的にたたみ、飛散防止の対策を講じる必要も出てきます。
そして、近年の名古屋で特に顕著なのが、厳しい残暑です。9月に入っても気温が30℃を超える真夏日が続くことが珍しくなく、秋のベストシーズンと考えていても、実際には夏の塗装と変わらないような気候条件になることもあります。
こうした名古屋特有の気候を熟知している地元の業者であれば、過去の経験から天候の傾向を予測し、柔軟な工程管理で対応してくれます。例えば、「台風が近づいているから、今日は早めに作業を終えて養生を徹底しよう」といった判断ができるのは、地域に根ざした業者ならではの強みと言えるでしょう。
天候は変えられない。だからこそ問われる業者の「管理能力」
ここまで、季節ごとのメリットや注意点についてお話ししてきましたが、最終的に最も重要になるのは、どの季節に工事を行うか、ということよりも、「どんな天候でも、品質を第一に考えてくれる誠実な業者を選ぶ」ということです。
天候そのものを、私たちが変えることはできません。だからこそ、その日の気温や湿度を正確に計測し、「今日は塗装作業に適しているか」「もし作業を進めた場合、どのようなリスクがあるか」を、専門家として的確に判断し、正直にお客様に伝えてくれる業者の「管理能力」が何よりも問われるのです。
例えば、少しでも雨が降りそうな予報が出ているのに、「工期を遅らせたくないから」という理由で作業を強行するような業者では、品質の高い仕上がりは期待できません。逆に、信頼できる業者は、たとえ工期が少し延びてしまったとしても、塗料が持つ性能を100%引き出すことを最優先し、「今日は塗装作業を見送らせていただきます」という勇気ある判断をしてくれます。
日々の作業内容や、天候による予定の変更などを、その都度丁寧にお客様へ報告してくれるかどうか。そうした透明性の高いコミュニケーションも、業者の誠実さを見極めるための大切なポイントです。お客様が不安を感じることなく、安心して工事の完了を待てるような、きめ細やかな配慮ができるかどうかが、信頼の証となります。
https://www.reform-matsumoto.jp/paint
ご自身の都合と、信頼できる業者との相談で最適な時期を決める
外壁塗装の時期選びに、全ての人にとっての「絶対的な正解」というものはありません。一般的には春や秋がベストシーズンと言われていますが、その時期に必ずしもご自身の都合がつくとは限りませんし、予約が集中して希望の業者に頼めない可能性もあります。
大切なのは、それぞれの季節が持つメリットとデメリットをきちんと理解した上で、ご自身のライフプランやご予算と照らし合わせ、最も納得のいく時期を選ぶことです。そして、その判断に迷った時は、信頼できる専門家に相談することです。
地域の気候を熟知し、どんな状況でも品質の高い工事を約束してくれる誠実なパートナーを見つけることさえできれば、どの季節に塗装を行っても、きっと満足のいく結果を得ることができるはずです。まずはいくつかの専門業者に声をかけ、年間を通した施工計画や、季節ごとの対応について、じっくりと話を聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
